ときめき

好きについて語ること、それは自分を語ること。

「幕が上がる」

DVDを借りて自宅で映画を見ました。

幕が上がる [DVD]

幕が上がる [DVD]

 

僕は基本的にアイドルという存在そのものがあまり好きではないので、去年この映画が話題になっていたときも「ふーん」という感じでノータッチを決め込んでおりましたが、WUGちゃんをきっかけに「アイドルも悪くないんじゃないかな」と少しだけ気持ちを改めましたので、なんとなしに手に取ってみました。

原作は平田オリザという方。

この人の演劇を通じたコミュニケーション論が一時期書店で平積みになっていたので、名前だけは知っていました。

「わかりあえないことから」についても読んだことがあるはずなのですが、話題になっているほど面白いとは思わず、そのままブックオフに売ってしまった記憶があります。他に覚えているところといえば「なんだか随分と自慢くさい文章を書く人だ」という印象だけでした。ちょっと胡散臭いな、とも。

こっちも非常にうさんくさい。しかし、ここまで面白い原作をかけるとなると、ちょっと見る目が変わっちゃいますね…。自由演劇というジャンルらしいです。「わかりあえないことから」の内容をちゃんと覚えていないのでイマイチ自身がないのですが、型にハマるより自分らしさを出そう。相手の良さを引き出していこう。自然に振る舞おう的なサムシングだったと思います。演劇論と絡めて書けば「おーっ」という感じだったのかもしれませんが、ありきたりのことしか書いてないような…。

でも、やっぱり結果ありきですね。こういう面白い映画を作れる人だと思うと、やっぱりその人の考えを聞きたくなってしまう。己の先見性の乏しさに少しがっかりしながら本編の感想です。

 

物語としては、見事に王道の部活(演劇部)青春モノです。

序…少女の挫折と成長を描く

破…少女の活躍とチームの成長を描く

急…意外なところから現れるライバルと、「銀河鉄道の夜」という小道具を筆頭に序盤から散りばめられた伏線を丁寧に回収しながら急速に物語がクライマックスに収束していく

一人の女の子の成長物語であるのは確かなのですが、しっかりとした群像劇であり、チームの成長劇でもあるのですよね。この物語の魅力はももいろクローバーという役者の役者らしさを最大限引き出した演出と脚本でしょう。彼女たちにオーダーメイドの物語が用意されているので、たぶん不慣れのはずの演技がとても生き生きとしています。今を時めく俳優女優に既存の物語を押し着せる原作付き映画は、この映画の放つ輝きをとっくりと見つめ直そう。

いやあ…。このみんなが主人公感たまらないなあ。登場人物はそれなりに多いけれど、けっして物語の都合でキャラクターを動かさない。ちゃんと生きたキャラクターを描きながら、物語も魅力的に描いている。彼女たちの、彼女たちだけの物語、という感じがしてとてもよかったです。

役者・原作・脚本・演出・劇伴トータルでこの映画のクオリティを高めているので「演劇は一人でやるものではない」というメッセージも心を打ちますね。とても良かったです。

 

それと、黒木華という役者はすごいですね。独特の存在感と生命力があり、演技になんの知識のない人間が見ても「確かにこの人はすごい!!」という説得力がありました。

 

楽しい映画でございました。